2023/12/15 中島多加仁著『太陰星のトリセツ: シリーズ紫微斗数14主星 その8』が出版されました
中島多加仁著『太陰星のトリセツ: シリーズ紫微斗数14主星 その8』がAmazonで出版されました。
シリーズの出版企画に際して
本書は『シリーズ紫微斗数14主星』の第8弾、太陰星の取扱説明書になります。
前回から天府系シリーズがはじまって、そのリーダー格である天府の隣に座す、頼れる秘書のような星が太陰です。北斗主星である紫微の側近が天機だとすると、南斗主星を補佐するのが太陰なのです。
太陰は『月』の象徴ですから、現代社会においては音楽や芸術を司ります。天府とおなじく女性の星。次の貪狼から巨門そして天相までが女性で、そのあと男性星に切り替わります。
太陽と同じで、北斗でも南斗でもなく『中天』というグループに属します。ちなみに主星での中天は太陽と太陰のみですが、副星になると天空・地劫や天姚・天刑などが中天星になります。
紫微斗数に使われる星で、太陽と月だけは地球から近く、同じ太陽系内に存在しています。他の12主星たちは別惑星の星です。
太陽は月に比べ、はるかに大きな天体です。
太陽の直径が約139万2000キロメートルに対して、月の直径は約3475キロメートル。その差、約400倍です。しかし地球から眺めた場合、この両天体はほぼ同じサイズに見えます。その理由は地球から、月よりも太陽のほうが約400倍遠い場所に位置しているからです。
太陽が1日周期で軌道を持つのに対し、月は1ヶ月の軌道を持っているため、女性の月経周期と関連付けられました。そのため世界中の語族で「月」と「月経」という語句が結び付けられています。ギリシア神話のポイベーをはじめ、アルテミスやセレーネ、中国神話の嫦娥のように月神はおおよそ女神とされています。
男性の月神としては、メソポタミア神話のシンや、北欧神話のマーニ、日本神話のツクヨミなどが挙げられます。これらの文化は太陽神を女神としています。ギリシアやエジプトは、月神信仰が一般的でした。テーベで信仰されたイビスとコンスは、どちらも月神です。エジプト神話のトートも月神とされています。またギリシアでは、スパルタの英雄メネラーオスも、月神の性質が見られます。 ヒンドゥ教のチャンドラには「月」という意味があり、日食や月食の際に、宗教祭儀において重要な役割を持っています。
日本の古代神話で、イザナミの禊から生まれた三貴神のひとつツクヨミは謎の多い神さまです。まず左目からアマテラスが長女として誕生し、次いで右目からツクヨミが、そして鼻から次男のスサノオが生まれました。イザナギは三貴子の誕生を喜び、「わたしは子を生み続け、ついに三柱の貴き子を得た」と言い、アマテラスに高天原の統治を、ツクヨミに夜の統治を、スサノオに海原の統治を任せたのです。
長男が月を司り、夜を統べる神として崇められ、月の暦を数える神と評されていました。また、月は「ツキ」とされ、運を呼び込む神とも考えられています。しかし何かと話題の多いアマテラスやスサノオと違って、なぜだかエピソードの記述がまったくないのは不思議です。
昨今、西洋占星術がブームですが、ようやく月星座も注目されるようになりました。一般的に星座占いは太陽の位置からみるため、毎月20日前後を区切りとして12の星座が示されています。しかし星座は太陽だけでなく、月も重要なのです。太陽星座は、じぶんの外側つまり社会と接するものとなります。仕事や社会活動でどう力を発揮していくかが示されます。対して月星座は、じぶんの内側、つまり無意識や本心、生まれ持った性質を表します。
月星座を知るには生年月日にプラスして出生時間が必要です。というのも月は、太陽に比べて1つの星座に滞在する日数が短いからです。約29日で12星座を回るため、1つの星座に2日から3日ほどで変わります。よって同日生まれでも時間によって月星座は異なるからです。
東洋には古くから『宿曜』という占星術があります。まさしく月の暦を使った占いで、宿曜は伝えられている説やロジックを見る限り、原点はインド占星術です。これが日本には宿曜経として伝わり、正式名称は『文殊師利菩薩及諸仙所説吉凶時日善悪宿曜経』といいます。平安時代、弘法大師空海が唐から持ち帰った密教占星術です。
空海は宿曜を弟子らにも教え、さらに天台宗の円仁も宿曜経を持ち帰って来ます。平安時代中期には密教僧の間で研究され、陰陽師に対して宿曜師と呼ぶようになり、宿曜道として陰陽道と勢力を二分するほどになりました。
仲が悪そうな陰陽道と宿曜道でしたが、通ずる部分もあり、祈雨法を合同開催したりと、互いに尊重しながら交流し、研究していたようです。そして戦国時代となって宿曜は、武将たちに戦略として使われていきます。宿曜の特徴は、月を27宿に分けて、さらに7曜を組み合わせた占いです。文字通り『宿』と『曜』を使う占いですね。宿曜は月の軌道(白道)を27宿もしくは28宿にわけ、月の運行を基にして、月が軌道上のどこのエリア(宿)にあるのかを知り、それによって個人の性格や相性、日にちの吉凶などを判断します。基本的には『命術』ですが、技法の中には方位の禍福を出す相法もあります。話はずいぶん外れてしまいましたが、紫微斗数での太陰星は『月』の性質が色濃いのです。それらを踏まえ、ぜひ本書を通して月の魅力を体感してみてください。