2024/3/12 中島多加仁著『天相星のトリセツ: シリーズ紫微斗数14主星 その11』が出版されました
中島多加仁著『天相星のトリセツ: シリーズ紫微斗数14主星 その11』がAmazonで出版されました。
シリーズの出版企画に際して
本書は『シリーズ紫微斗数14主星』の第11弾、天相星の取扱説明書になります。
このシリーズも佳境に迫ってきました。残りわずか3星となり、天梁・七殺・破軍で完結となります。さて、14個ある主星のうち、前半は『紫微系』が6つ、そして後半のリーダー格である天府から太陰・貪狼・巨門そして今回の天相の5つが連続して女性星となっています。
天府は主君の正室、つまり妃(女王)です。
太陰はお姫様になります。
貪狼は側室であり、愛人や情婦です。
巨門はお局様がニュアンス的に合っていますかね。
天相はなんでしょう。お手伝いさん(メイドさん)でしょうか?
じつは女性星の最後である天相だけ、ある物語では男性が割り当てられているのです。いや、もうひとつ忘れていました。紫微系である天同も女性星なのに男性キャラとなっています。
その「ある物語」とは、古代中国の怪奇小説『封神演義』です。
ただし、本シリーズ各書の前書きで何度か述べている通り、封神演義と紫微斗数との関係は、後世の好事家による虚構なのです。とはいえ、事実無根の幻想ではあるかもしれませんが、紫微斗数の主星を覚える上で、けっこう役に立つのです。というか、思いのほか登場人物と星たちの性格が似ているのです。
ところが、14個すべての星がピッタリ当てはまるかというと、そこは完璧ではありません。では、紫微斗数の女性星と封神演義の人物を並べて確認してみましょう。
天府は物語の主人公である殷国(商)の暴君・紂王の皇后。
太陰は殷国を見限り、周国へ寝返った黄飛虎将軍の夫人。
貪狼は紂王をたぶらかした稀代の悪女として名高い妲己。
巨門は周国に加担した名軍師・太公望の元妻・馬千金。
と、ここまでが女性です。
しかし最後の天相だけ、殷国(商)の太師で、商王朝三代に仕えた老臣である聞仲なのです(余談ですが天同星も男性で、周国の初代君主である文王です)。
ちなみに聞仲は、黒麒麟にまたがり、金鞭を武器とし、眉間に神眼を持つ仙人で、架空の人物とされています。まだ暴君になる前の、幼いころの紂王の教育係で、戦死したあとも紂王に諫言をするべく亡霊となって現れるという忠義の厚い高潔者です。
天府から巨門までの4つの星は、なんとなく封神演義の人物に性格や役割がそっくり。しかし天相だけは(厳密には天同もですが)なんだかちょっとそぐわないのです。
まぁ、そもそもが封神演義と紫微斗数は関係ありませんから、不相応な割り当てがあっても議論の余地はないでしょう。
とはいえ、あえてこじつけるならば女性最後の星ですから『陰極まって陽に転ずる』の作用をもって、男性キャラクターにアサインされたのかもしれませんね。もちろん、ことの真偽は不明です。
ちなみに相という字は「卿相」あるいは「宰相」であり、政府の最高位にある官職です。中国において天子を補佐し、政治を行う重要な役目で、日本では総理大臣と同義の『首相』という呼称があります。
紫微斗数の書籍において、天相は「二番手の星」とされています。この二番手という言葉は比喩であり、かならずしも二番目の位の人物というわけではありません。いわゆる二番手とは、主役の次に位置するキャラクターのこと。あと一歩で主役に届かなかったり、主役と比べて目立たないキャラクターを指しています。本人にとっては悔しい話かもしれませんが、キャラクターによっては故意に裏方へ回り、主役を陰で支えるサポーターとして徹する影の立役者なのです。
天相に相応しいポジションは、あえて後方に下がり、舞台役者の魅力を最大限に発揮させてあげる、最高の「黒子役」的存在といえるでしょう。
ひとはこの世に生まれ、さまざまな経験を通じて成長し、死を迎えます。「死」という個人の「終わり」は、誰にとっても避けられないものですが、それは新たな生命の始まりにつながる、とも考えられます。
天相は、個人という小さな存在の死を超え、もっと大きな存在へと立ち返ろうとする方向性を意識する星なのです。
外の世界にある境界線を意識しないこと。そして「わたしはこういう存在」という固定観念から解放されることが、天相に与えられた人生のテーマです。「境界線を越える」とか「何ごとにも囚われず自由でいる」といった性質、それ自体に優劣はありません。
いわゆる「水」が、わたしたちの命と生活に欠かせない存在であるだけでなく、場合によってはそのエネルギーが命を奪い、生活を破壊することもあるのと同じ。でも、水の力と性質を知っていれば、それをコントロールすることも可能なのです。